【Epicが突き付けた課題】AppleとGoogleのアプリ手数料問題とは?

2020-9-28

AndroidスマホやiPhoneのアプリは、アプリストアから提供されるのが一般的です。しかしスマホアプリを提供している企業(ベンダー)が、アプリストアを提供している「Apple」や「Google」へ手数料を収めているのはご存知でしょうか。

アプリストア内の手数料は決して安いものではなく、これまで何度も物議をかもしてきました。そして今回、「フォートナイト」を提供する「Epic Games(エピックゲームス)」がAppleやGoogleへ手数料について反旗を翻したことが話題となっています。

今回は現在大きな話題となっているEpic GamesとApple、Google間の問題を整理しながら、関連の話題もご紹介していきます。

Epic GamesがApp StoreやGoogle Playに独自決済を導入、規約違反でフォートナイトが削除される

サードパーティーのシューティングゲームとして建築といったさまざまなゲームができる「フォートナイト」は、全世界に多くのファンを持っています。フォートナイトはパソコンやゲーム機だけでなく、スマホでもプレイ可能です。

スマホ版フォートナイトはゲーミングパソコンやゲーム機を購入するお金がないユーザーへ、フォートナイトを広げるきっかけとなりました。スマホ版フォートナイトは、今までApp StoreとGoogle Playなどで提供されていました。

しかしEpic Gamesのある対応が、AppleやGoogleの琴線に触れる形になります。

問題になったのは、Epic Gamesがフォートナイトへ新たな決済方法を導入したことです。「Epicディレクトペイメント」と呼ばれる決済方法では他の決済方法より、20%の割引をユーザーへ受けられます。しかしその課金方法はアプリストアを通すものではなく、直接Epic Gamesへ料金が支払われる仕組みだったのです。

AppleもGoogleも、規約内で「アプリストアを通さないアプリの課金」を原則禁止しています。今回アプリストアを通さないで課金する方法を直接フォートナイトアプリへ搭載したEpic Gamesの対応は、AppleとGoogleから猛烈な批判を受けました。

決済が追加されて間もなく、App Storeからフォートナイトアプリが削除されました。それからまたすぐに、今度はGoogle Playでフォートナイトアプリが削除されてしまう事態となっています。

Epic Gamesがアプリストアをすり抜けようとしたのは、「手数料が30%とあまりにも高かった」から

今回Epic Gamesがアプリストアを通さずに課金を行えるようにしたのは、アプリストアの手数料が30%と高額だったことが関係しています。

App StoreとGoogle Playはアプリ提供側に対して、次のような手数料を徴収しています。

  • アプリストア内にアプリを掲載する手数料:App Storeでは99ドル/年、Google Playでは1回アプリを配布するごとに25ドル
  • 有料アプリの販売完了時に掛かる手数料:両方とも1回ごとに30%
  • アプリ内での課金に対する手数料:両方とも1回ごとに30%
  • サブスクリプションで支払われる料金に掛かる手数料:App Storeでは初年度30%、1年以上提供で15%に、Google Playでは15%

フォートナイトはその中でも、「アプリ内での課金に対する手数料」で利益を得ていました。フォートナイトがApp Storeで今まで稼いだ売り上げの総額は、12億ドルと言われています。

しかしこの内の30%である3億6000ドルは、Epic GamesではなくAppleが受け取る形になります。販売利益に対して30%手数料が掛かるのを、安いという方はまずいないでしょう。

Apple側では

  • 人員も利用した、アプリ内の厳しい審査
  • アプリを開発するためのツール提供
  • マーケティングに役立つノウハウの提供

といったサービス提供にコストが掛かるのだと言っており、一理あると思います。Googleも同じでしょう。

ただし手数料30%が本当に妥当かどうかについては、複数の企業や団体が異議を唱えています。私たちも他人ごとではなくきちんと手数料について考えると、アプリへの理解が深まるでしょう。

Epic Gamesは用意周到にことを運んでいた?

 

実はEpic Gamesは、用意周到にことを運んでいました。フォートナイトを削除されるだけでなく他の同社製アプリも提供停止になったりと影響は広がっていますが、予想の範囲内だとする見方が強いです。

そういえる根拠の一つに、Appleを批判する動画を提供したことが挙げられます。

App Store内でフォートナイトが停止されて間もなく、Epic Gamesは1本の動画を投稿しました。その動画はAppleが1984年に公開した映像をオマージュしており、Apple(スクリーンに映し出された人物)へフォートナイトのキャラが武器を投げてスクリーンを派手に割って去っていくという、かなりの風刺に富んだものになっています。

Appleを既存権力者として、強く抵抗しようというEpic Gamesの意思が見て取れるのではないでしょうか。Epic Gamesはこの動画を公開することで、フォートナイトユーザーにもAppleに対していっしょに異議を唱えてくれるように呼び掛けています。

この動画はフォートナイトが削除された直後にアップロードされているので、意図的に用意された可能性が高いです。

  1. Appleがフォートナイトをストア内から削除する
  2. それを見越して風刺動画を投稿して、支持を集める

としたかったのでしょう。

実際この戦略は、ある程度成功しているようです。

Epic Gamesは以前から手数料に対して不満を抱いていた

Epic GamesのAppleやGoogle批判は、今に始まったことではありません。以前にも手数料に対して反発する意見を公表しています。

そしてある程度の対策も行っていました。たとえばAndroidスマホに対しては当初フォートナイトをGoogle Playで提供するのではなく、自社サイトからQRコードを読み込んで独自ダウンロードしてもらう形式を取っています。結局2020年4月にはGoogle Playへフォートナイトアプリを掲載してはいますが、いまだにEpic Games公式サイトではフォートナイトをインストールしてプレイが可能です。

ですから今の時点でもAndroidスマホユーザーは、フォートナイトを問題なくプレイできるわけです。批判はしているもののAppleほどGoogleへの風当りが強くないのは、こういった事情も影響しているのかもしれません。

ただし今後はGoogleに対しても訴訟を準備しているので、Googleとの対立も激化するでしょう。

【NetflixやSpotify、Facebookも】手数料に反発しているのはEpic Gamesだけではない

Epic Gamesだけではなく、他にもAppleやGoogleへ非難の目を向ける企業は多いです。

たとえばNetflixはすでにブランド力があるのにもかかわらず、長年サブスクリプション料金手数料をAppStoreで徴収されているのに疑問を抱いていました。わざわざAppleを通さなくても、Netflixは自力で料金徴収できる力を備えています。

そして現在では、AppStoreで課金する形式を全面廃止しています。公式サイトから徴収を行い、直接利益を得ている形です。

また「Spotify」も、似たような施策を取っています。アプリ内に課金要素を用意せず、自社サイトへ誘導して課金を行っています。誘導の際はあえてそこから直接課金ができないように、「プレミアムプラン(有料プラン)の詳細は自分で調べてください」と説明する周到ぶりです。

最近では「Facebook」が、Appleを批判しています。

Facebookはコロナ禍で企業をサポートするため、オンラインイベントをFacebook上で行える新機能をサービスへ追加しました。イベントを通して企業は、Facebook経由でユーザーから料金を受け取れます。

しかしAppStoreの場合はアプリ内課金を行うと、30%手数料が取られて企業の利益が引かれます。そこでFacebookは手数料が掛からない自社独自決済をアプリへ導入させてもらえないかとAppleへ相談したところ、却下されたそうです。

その後iOS版Facebookに「ここで決済すると30%手数料が引かれてしまう」というニュアンスのフレーズを入れようとして、それも却下されました。

FacebookはAppleを、「中小企業の売上を搾取しようとしている」と厳しく批判しています。そしてFacebookやSpotifyは、今回のEpic Gamesの対応に同調しています。

ついにEpic GamesとAppleが法廷へ、どちらの言い分が通るのか

Epic GamesとAppleは、すでに第1回目の法廷対決を終えています。カリフォルニア州の連邦地裁で行われた最初の対決は、どちらにも傾いていない印象です。

まずEpic GamesのフォートナイトをAppleが削除した対応については、地裁は妥当という判決を下しました。しかしAppleがEpic Games対策として実行しようとした開発者アカウント停止については、差し止めの命令が出ています。

開発者アカウントが停止されると、Epic Gamesが提供している高品質ゲーム作成ツール「Unreal Engine」が利用できなくなります。複数のゲーム業界の企業に悪影響が出るので、地裁が差し止めしたのは適切な判断でしょう。

今後地裁がどちらの意見に傾くのか、今後も注目です。

まとめ

今回はEpic Gamesが提起したAppleとGoogle手数料30%問題について、いろいろな話題を絡めて説明してきました。

アプリストアがサービス提供のため手数料を取るのは、商売として当たり前だと言えます。ただし手数料額が妥当かと言えば複数の企業が反発しており、疑問が残るのも確かです。

今後のEpic Gamesの動きは、私たちスマホユーザーにも大きな影響を与える可能性があります。ぜひ今後もEpic Gamesの動きを、最新ニュースでチェックしてみてください。

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